こんにちは。
何だかんだずっと課題が忙しくて、最近ようやく本格的に夏休みが始まりました。
そこで、夏学期に習ったことを定着させるため、記事にしてまとめようと思います。
まずは、力学で習ったスケーリング理論からケプラーの第3法則を導く方法を書こうと思います。
スケーリング理論の理解は結構難しくて、授業を聞くだけではよくわからなかったので、
色々自分で考えてこうだろうと思った内容も含んで書こうと思います。
私は一学生であり物理学の専門家ではないため、その点はご了承ください。
議論の流れ
なんかインターネットで調べる*1と少し違う手法もあるようですが、次のような流れで導いていきます。
- 各物理量を「単位付きの部分(定数)」と「単位無しの部分」に分ける
- 単位無し版の運動方程式を導く
- 単位付きの定数間の条件式を導く
- スケーリング定数とスケール因子の関係性を理解する
- 3.の条件式がケプラーの第3法則を述べていることを理解する
1. 各物理量を「単位付きの部分(定数)」と「単位無しの部分」に分ける
ある質点が次のような運動方程式に従っているとします。
つまり万有引力に従っているということですね。各変数は基本的なものなので説明は省略します。
ここで、変化しうる物理量であるとを次のように表します。
はと同じ単位を持つ量、はと同じ単位を持つ量とします。つまり、とは無単位となります。
2. 単位無し版の運動方程式を導く
先ほどの運動方程式から、に関する関係式を導出します。
このようになりますね。
3. 単位付きの定数間の条件式を導く
さて、2.で導出した関係式は、両辺無単位であることが分かります。そのため、右辺の定数部分は無単位です。
と置くことができます(は無単位)。また、は定数なので、明らかには定数です。
4. スケーリング定数とスケール因子の関係性を理解する
3.までの説明では、ケプラーの第3法則にはまだ遠いです。なぜなら、ケプラーの第3法則は惑星間で一定となる法則ですが、3.の式では1つの質点についてしか考察していないからです。 そのため、もう1つ質点を考えましょう。次のような運動方程式に従っているとします。は共通です。
同様に、
とします。の関係式を考えることで、同様に無単位の定数を用いて
と表すことができます。
ここで、もしがいえるならば、
が言えますね。これによってケプラーの第3法則が示せたことになります。
はどうすれば言えるでしょうか。実は、これはがどのような種類の物理量かを言うことで、示すことができます。
具体的には、がどんな物理量かということが、の値を決定します。このことを見ていきましょう。
万有引力では説明が煩雑になってしまうので、簡単のため復元力で説明します。質点が次のような運動方程式に従っているとします。
同じように、とします。すると、
となります。この式には含まれていない点は重要です。
右辺の定数部分は無単位の定数で表せますね。これをとしますと、
です。について解いてみましょう。
となります。
ここで高校で習った「単振動の周期に関する公式」を思い出してみましょう。
でしたよね。つまり、この時だということです。
よって、が周期を表すとき、だといえます。
の値を変えると、は周期とは別の意味を持つ量になりえます。このことは、先ほどの運動方程式を解くことにより理解することができます。
となることが分かります。が周期を表すとき、であるため、が1変化するごとに運動が反復することが分かります。 そして、が1変化するということは、でしたので、は変化するということです。この度に運動が反復するので、確かには周期ですね。
もしならばどうでしょう。この時、は変化するごとに運動が反復しますね。 が変化するということは、は変化するということです。は周期をで割った量ということになります。意味を持たせるとするならば、位相が1ラジアン変化するのにかかる時間ですかね。
をスケール因子と呼び、をスケーリング定数と呼びます。スケール因子の持つ意味によってスケーリング定数が定まるということが分かりました。また、スケーリング定数が振幅など個別の運動の特徴に影響されていない点も重要です*2。
5. 3.の条件式がケプラーの第3法則を述べていることを理解する
万有引力の時も同様です。「は周期、は長半径」という風に定めると、それによってが定まります。そのため、「は周期、は長半径」という風にも定めれば、となるわけです。ゆえに、
となります。は共通にしていましたから、消去すればケプラーの第3法則が出てきますね。
この導出から分かること
実は、ここまでの導出から分かることがさらにあります。
ケプラーの第3法則は「同一の恒星を持つ惑星間」に適用できるのでしたが、なぜ「同一の恒星」でなければいけなかったのでしょうか。
これは、に関する式を変形すればわかります。
より、
です。右辺は恒星の質量に依存します。これが「同一の恒星」でなければならない原因です。 逆に言えば、質量が同じなら同一の恒星でなくても成り立ちます。
この話は完全に授業で話されていたことですが、この式からが本当に一定なのかを知る事にも使えるそうです。
色んな場所の恒星とそれを回る惑星の観察から、を求めることができます。これによって空間内でが変化しないかを調べることができます。
ネットで見つけた他の方法
インターネットで調べると、次のような方法もあるようでした*3。方針だけ書きます。
- を倍、を倍することを考える。ポテンシャル(位置エネルギー)はその際倍すると考える。万有引力の時、である。を定数倍しても同じ運動方程式を満たすはずであることから、間の関係式が得られ、それがケプラーの第3法則を指す。
この方法のほうがシンプルだと思います。スケール変換をしても運動方程式は変わらないということを用いています*4。
授業で扱った方法と異なり、「無単位にする」ようなことはしていません。スケーリングにもいろんな方法があるのでしょうか。
授業では「関心のある量を無単位にする」ことがスケーリングの利点として取り上げられていました。これにより、電気回路での振動と力学の振動を同一に扱ったりすることができ、理論の普遍性が増します。
その方法とは少し違ったものなのではないかという印象を受けます。
まとめ
記事を書いていて改めて運動方程式ってすごいな、と思わされました。運動方程式は個別の運動の詳細には依存せず、楕円運動ならこう、単振動ならこう、という風に定まります*5。その点がスケーリングの上でも効いてきているような気がします。
スケーリングは定数のイメージがしづらく、なかなか捉えづらい考え方で難しいです。考えていると収拾がつかなくなってくることもよくありました。
ですがその理論の持つ普遍性などはとても魅力的ですよね。秋学期の電磁気ではスケーリングで得た考え方を用いて力学での理論と対比させながら学習できるようにしたいです。
謝辞
夏学期にわたり力学の講義をしてくださったO先生に感謝します。